研究プロジェクト紹介
地球環境研究総合推進費S-5
地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動
シナリオに関する総合的研究
実感プロジェクトの開始に向けて(研究プロジェクトリーダー 東京大学 住 明 正)
2007年のIPCCの第4次報告書が発表されたのを契機にして、「地球温暖化問題に関しては行動の時代に入った」と広く考えられている。しかし、行動の時代になると、「本当にこれでいいのか?」という迷いが心をよぎる。行動するためには、理解のみでは不十分で、結果の如何にかかわらず、結果を引き受ける覚悟が必要となる。
地球温暖化のシミュレーションに関しては、今までの計算では、現実の要求に対する精度が不足するがゆえに、どのようにして現実の課題に応用するかについては考慮の対象ではなかった。しかしながら、地球シミュレータの登場に伴う気候モデルの精度向上は、その利用に関して新たな問題を提起している。そのことは、筆者が昔勤めていた気象庁での天気予報に関する議論を思い出させる。そのころは、天気予報に関して2つの立場が存在した。ひとつは、数値予報課と呼ばれるグループで、数値モデルを発展させることにより天気予報の精度を向上させようとする立場である。もうひとつは、予報課を中心にするグループで、現実に役に立つような予報を出す必要があり、必要に応じて、数値モデルの結果は修正されるべきであるとした。ともすれば、この両者の立場は敵対するようになっていたが、実際には、両方の立場が必要なのである。
このプロジェクトは、温暖化予測に関して予報官の立場に立つものである。行動の時代を迎えて、社会の期待と不安に答えて、具体的な適応や対策の課題に対応しようとするものである。
もちろん、我々の知識は完全でないし、多くの課題が存在する。しかしながら、このようなステップをふめたことは感慨を新たにする。このプロジェクトでは、従来の自然科学のみならず、社会科学の研究も含んでいる。
この研究プロジェクトの成果が、あらたな適応策などの分野を開くことを切に希望する次第である。
(リンク)
地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究
S-5-1
総合的な確率的気候変動シナリオおよび影響シナリオの構築
テーマリーダー:江守 正多/(独)国立環境研究所
- 気候、影響の予測はどの程度の信頼性(/不確かさ)を持っているのか、また、それをいかにして測るか。その答えを含めて、現在の知見を総合すると、温暖化影響の全体像がどのように描けるか。
- 地球温暖化とは実際のところどの程度深刻な問題で、どの種類の影響が特に深刻なのか。
- また、コンピュータによる気候、影響の予測をどの程度信じてよいのか。
「知・情・意」に着目した実感を伴う環境コミュニケーションのための実験的研究
テーマサブリーダー:松本 安生/神奈川大学
- 気候の予測における不確かさや温暖化影響の全体像を、市民や企業にどのように伝えたら、有効でかつ誤解の無い情報として伝わるか。
- 市民の温暖化に対する理解にはどのような特徴があるのか。また、それらが人々の関心や態度、行動とどのように関係しているのか。
S-5-2
マルチ気候モデルにおける諸現象の再現性比較とその将来変化に関する研究
テーマリーダー:高薮 縁/東京大学
- 温暖化した時に実際にどのような現象が身近でおきるのかという問いに気候モデルはいかに答えることができるか。
- IPCC報告書に貢献した世界の気候モデルによる温暖化予測実験で、低気圧、台風、降雨、エルニーニョ等の様々な気象・海象がどのように変化すると予測されているか。
- 現在気候での再現性の評価を通して、各モデルの予測する温暖化時の気象・海象の変化予測の不確実性を軽減できるか。
S-5-3
温暖化影響評価のためのマルチモデルアンサンブルとダウンスケーリングの研究
テーマリーダー:高薮 出/東京大学
- グローバルな地球温暖化の進行に伴い、日本およびアジア域におけるメソスケール現象・地形効果等を含むローカルな気象現象がどのように変わるのか。また、この問いに答えるためにはどのような予測技術の開発が必要なのか。
- IPCC AR4において、グローバルな地球温暖化は規定の事実となった。そのため今後は国や地方自治体によるローカルな対策策定が必要になる。対策策定の根拠として具体的にどのような種類・解像度・精度の気象データが求められているのか。
S-5-4
統合システム解析による空間詳細な排出・土地利用変化シナリオの開発
テーマリーダー:山形 与志樹/(独)国立環境研究所
- エアロゾル排出と土地利用変化の空間詳細シナリオの作成はどうしたらよいか?
- 作成された空間詳細シナリオは、実際の発展と矛盾はないか?
- 空間詳細シナリオは温暖化の影響を大きく受けるのか?







